2本の足でつくられる体の力学と真の健康バランス

股関節の角度の違いは、さまざまな理由によって起こります。
なかには先天的に違っている人もいます。ですが、多くの場合は、日常の動作や体の動かし方のクセ、仕事上の特殊な姿勢などによって、左右の股関節の角度に変化が生じています。
おそらく、左右の股関節の角度、両足の長さがピタリと同じという人を探すほうが、むずかしいといっていいでしょう。
なぜ、左右の股関節の角度を同じに保つのはむずかしいのでしょうか?

力学には静力学と動力学がありますが、礒谷療法は、両方の力学の考え方を応用しています。
しかも、人体の力学「生体力学」です。静力学とは力の均衡についての理論体系であり、動力学とは力と運動の関係に基づいた理論です。
この2つの力学を、私たち人間の体にあてはめて考えてみましょう。

人間の体の力学の中心は、2本の足と上体とを結ぶ股関節にあります。
ところで、みなさんは股関節がどこにあるか知っていますか?股関節がどんな形をしているか知っているでしょうか?図1を見てください。股関節は、人間の体にたくさんある関節の中でも最も大きく、しかも最も重要な働きをしている関節です。
この股関節が、両足を骨盤にしっかりと連結させ、上体の体重を支え、両足を自由に動くようにしてくれていることで、私たちはスムーズに2本の足で歩くことができるのです。

股関節は、大腿骨の上端にある丸い大腿骨頭が、骨盤の寛骨臼にピタリとはまりこむように連結された構造をしています。そして、その周囲に何本もの靭帯(細くて強い筋肉の束)が張りめぐらされ、股関節がはずれないようになっています。
股関節には、他の関節には見られない大きな特徴があります。
図1を見ていただくとわかるように、大腿骨頭と大腿骨が、130度の角度で曲がって連結されているのです。この形はとても特殊なもので、腕と体を連結している肩関節には見られません。

このように股関節は独特の構造をしているため、2本の足のバランスをピタリと均衡に保つのは、たいへんむずかしいのです。左右の股関節の角度が少しでも違うと、足の長さは微妙に違ってしまいます。

では具体的に、股関節がどのような状態になることで、角度の違いが生じてくるのでしょうか?
股関節が、本来の位置よりも体の外側に向かって開くことを「外転」と呼び、逆に、体の内側に向かって入り込んでくることを「内転」と呼びます。
いずれの場合も、大腿骨そのものの長さに変化はありませんが、左右の股関節の角度が変わることによって、左右の足の長さが違ってくるわけです。外転すると、外転した足のほうが長くなり、内転すると、足は短くなります。
また、足が外側にねじれることを「外旋」、内側にねじれることを「内旋」と呼びます。外転と外旋は同時に起こることが多く、反対に内転と内旋は同時に発生することが多いため、外転、外旋が起こった足はより長くなり、内転、内旋が起こった足はより短くなっていきます。

こうして左右の足の長さが違ってくると、体の力学的均衡がくずれてきます。
左右の足は股関節によって骨盤を支え、骨盤は腰の部分で背骨に直結し、上半身や頭へとつながっていきます。したがって、股関節と左右の足の長さは、体のすべての力学的均衡に大きな影響を与えているのです。

股関節の角度と足の長さ、そして骨盤・背骨との一連のつながり・・・この人体特有の力学的関係を礒谷公良が発見したことが、礒谷療法の出発点であり、これこそが、礒谷療法によって健康を取り戻すことができる根本的原理なのです。