股関節の転位(ずれ・ゆがみ)が起こる原因は、こんなにたくさん

先天性(生まれつき)で股関節がずれている 
 
オムツのあて方が悪かった 
 生まれて間もない頃は、股関節周辺の筋肉もまだ発達していないため、オムツのあて方は、その後の股関節角度に、たいへん大きな影響を与えます。

 赤ちゃんにオムツをあてるとき、お母さんのクセで左に寄せてあて続けていると、左足股関節が外に開きぎみになります。それが1年以上続くと、赤ちゃんの左足は、右足に比べて確実に外転し、長くなってしまうはずです。

転落・転倒で体を強く打ったり、バランスをくずして力を入れたりしたとき 
 高い所から落ちたり、転んだりしたときに股関節部分を強く打つと、ずれが起こる場合があります。また、股関節部分を直接打たなくても、転落したり、転んだときに瞬間的に体のバランスをとろうとして、足を開いたり、力を入れたりすることで、股関節のゆがみが起こることもあります。

外傷・骨折の治癒後 
 交通事故などによって足や腰にケガをしたり、足や腰の骨を骨折したりすると、傷が治ったあとも、股関節転位が残ってしまうことがあります。

腰痛治療の牽引(けんいん)で起こることも 
 腰椎を痛めたときなど、足から腹にかけて重いおもりをつけて引っ張る「牽引」という治療を受けた場合に、股関節にも強い力がかかって伸ばされてしまうため、ずれやゆがみが起こる可能性があります。

妊娠・出産時の体型の変化から 
 妊娠4カ月頃からおなかが前方に張り出してくると、バランスをとるために、立っているときや歩くときに両足を左右に開くようになります。大腿部を開き、外股ぎみになるため、股関節は外転し、爪先も外向きにして足に力を入れるため、外旋も同時に起こることが多くなります。この状態のまま、およそ6カ月間を過ごす結果、出産の時期を迎える頃には、両足の外転、外旋はかなりの確率で固定してしまいます。

性交によって起こることも 
 とくに女性の場合、性交によって、股関節のゆがみが起こる可能性が考えられます。

スポーツが引き金に 
 スポーツの多くが股関節のずれやゆがみの引き金になります。
 「無理をしているから」「体を痛めつけてきたから」といわれますが、最も根本にあるのは股関節のずれやゆがみであり、これにより全身にゆがみが生じて、さまざまな内臓疾患や機能低下が引き起こされているのです。

 相撲(すもう)や乗馬、重量挙げなどの選手は、つねに両足を左右に大きく広げる姿勢をしています。毎日、朝早くからシコを踏み、股割り稽古(けいこ)をしている相撲取りの両足の股関節は、大きく外転しているはずです。
 水泳選手も、ターンするときに一定の向きに体をひねり、壁を蹴ります。このときに、片方の股関節を外側に向かって大きく回転させるため、転位が起こりやすいのです。

エアロビクス・バレエ・ヨーガ・座禅なども 
いずれも両足を大きく開く動作を長時間にわたってするため、股関節の外転が起こります。無理をしないことが大切です。

10肥満が股関節に負担をかける 
 体重が増えると、重い体を支えるために足は自然と外側に向いていきます。もともと外転があると、長いほうの足にさらに重心がかかるため、外転はひどくなる一方です。

11重いものを持つ 
 重いものを持ち上げたり、持ち続けるときは、自然と両足を外に向けて踏ん張っているはずです。股関節には、ふだんと違った無理な力が加わります。

12職業病 
 職業によって、いつも同じ足を開く姿勢をする場合があります。たとえば、歯科医が治療器具の操作のためのペダルを踏むとしましょう。
 毎日、左足でベダルを1日何回も踏みながら、上体を右に向けて患者さんの治療にあたっていたら、その歯科医の左足の股関節は外に向かってずれ、左足はますます長くなるに違いありません。

 また、大型バスやトラックの運転手が、足を大きく広げながらブレーキやアクセルを踏んでいると、広げているほうの足の股関節にずれが起こってきます。長時間、同じ姿勢で運転をして、絶えず緊張をしていなければならないわけですから、次第に体調をこわしていくのも当然といっていいでしょう。

13日常動作のクセから 
 誰でも、動作のクセ、姿勢のクセというものがあります。歩き出すときは必ず右足から先に出す人、逆に最初の一歩は必ず左足からという人、寝るときは右を下にしないと安眠できない人、うつ伏せにならないと眠れない人などです。

14転位(ずれ・ゆがみ)は遺伝する 
 股関節転位は基本的に遺伝していきます。右足の長い母親から生まれた赤ちゃんは、先天的に右足が長いことが多く、両親がともに左足が長いときは、赤ちゃんの左足も、ほぼ確実に長いといっていいでしょう。私自身、これまで30年間にわたって母親や赤ちゃんの股関節を観察してきた結果、そういい切ることができます。